手術室のBGM事情

こんにちは。ドクターカズです。

 

今日は手術中のBGMについて、少し語らせてください。

 

 

今でこそ、手術中に外科医が好みの音楽を流すことは珍しくなくなりましたが、私が医師になった頃、大学病院の手術室は、BGMを流すことなど考えられませんでした。

 

シーンと静まり返った手術室。聞こえるのは、単調な心電図のモニター音と麻酔器の発する低周波の機械音のみ。黙々と手術をこなす外科チーム。

 

張り詰めた緊張感の中、時折執刀医が新米を叱責する声が響きます。それはあたかも修験者の道場のような雰囲気です。

 

駆け出し外科医の私は、それが当たり前だと思っていました。

 

その数年後、初めて出向した市中の病院で手術室に入った時、BGMが流れているのを聞いて、心底驚きました。

 

その病院の外科部長は当時としては進歩的な人物で、私が初めて一緒に手術をした時は、ヴィヴァルディの「四季」が流れていました。

 

リラックスした雰囲気の中で、軽やかに手術を進める部長の姿はまるでオーケストラの指揮者のよう。若き日の私は、大きなカルチャーショックを受けたものです。クラシック音楽好きの外科部長は、その日の気分で曲を選んでいました。

 

クラシックのBGMは、リラックスした雰囲気を作ると同時に、軽度の興奮と緊張感を呼び起こすため、集中力を高め、最高のパーフォーマンスを引き出すのに打ってつけだと、部長は仰っていました。

 

私が留学したアメリカの病院では、手術室のBGMはさらに個性的でバラエティに富んでいました。

 

例えば、私のボスのお気に入りはビートルズで、手術室に入ってナースに目配せすると、ボスお気に入りのナンバーが自然と流れてきたものです。

 

手術室に隣接した手洗い場で、映画「ロッキー」のファンファーレが鳴り響くテーマ曲を聞きながら、気合を入れて手術室に入る外科医も居ました。

 

これらはすべて全身麻酔で患者さんが眠っている時のお話です。局所麻酔や腰椎麻酔で患者さんが目覚めている場合は、患者さんのお好みの曲をかけることが多いようです。

 

友人の外科医に聞いた話ですが、局所麻酔の手術中、クラシックのオムニバスCDをBGMに流していたら、突然ベートーベンの「運命」が始まったそうです。慌てて手術室のナースが曲を変えましたが、執刀医や患者さんはさぞかしびっくりしたと思います。何とも笑えないエピソードですね。

 

（画像はメディカルオーケストラ・金沢、私の知り合いも演奏しています）

 

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