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    魔法のやかんはどこに行った?

    こんにちは。ドクターカズです。

     

    日本列島を熱狂の渦に巻き込んだラグビーワールドカップは、南アフリカの優勝で幕を閉じました。

     

    日本開催が決まった当初、大会の盛り上がりに疑問を持つ声も聞かれたそうですが、ふたを開けてみれば想像以上の大成功。相手をリスペクトするラグビーの精神が、日本人の心にマッチしたのだと思います。

     

    これを機に、ラグビー人気がますます高まっていくことを期待します。

      

    今回のワールドカップを観ていて、私がプレーしていた頃(約40年前)と比べて、変わったなあと思う点がいくつかありました。特に印象に残ったのは、選手の安全に対して非常にきめ細かい配慮がなされていたことです。

      

    屈強な大男が肉弾戦を繰り広げるラグビーに、ちょっとした怪我はつきもの。プレーの最中に、選手が倒れてゲームが中断することはよくあります。

     

    中でも頭部への衝撃は、時に後遺症を残したり、最悪、死に至る危険性をはらんでいます。今大会では、脳震盪など頭部外傷への安全管理が、極めて厳密に行われていました。

      

    試合中に選手が脳震盪を疑われると、HIA(ヘッド・インジュリー・アセスメント)により、強制的に一時退場してドクターの診察を受けるように指示されます。

     

    脳震盪と診断されれば、選手は試合に戻れず、さらに重症の場合は出場停止期間が伸びます。

      

    また、頭部へのタックルも厳しく取り締まられるようになりました。TMO(映像判定)も導入されて、明らかに危険と判断されれば、即座にレッドカードが出されます。

      

    疲労で動きが鈍くなったり、故障で体調が悪そうな選手に代わって、元気なリザーブの選手が次々と出てくることも、昔はありませんでした。

      

    オールドファンの皆さんはご存知かと思いますが、昔はラグビーの試合には大きな黄金色のやかんがつきものでした。

     

    試合中に選手が倒れると、やかんを持ったマネージャーが駆け寄ります。そして中の水を頭から、ジャー!すると、あーら不思議、選手はすっくと立ち上がって、プレーに戻って行ったのです。

     

    世間一般では、「魔法のやかん」とまことしやかに呼ばれていました。

      

    現在では、倒れている選手に水をかけることは医学的に無意味であり、むしろ危険な場合があることから、「魔法のやかん」が活躍することはありません。

      

    現役時代、何回も水をかけられた私としては、「魔法のやかん」には特別な思い入れがあります。昔は頼りにしていた有難いアイテムですが、選手の安全性を高めるため、必然的に姿を消していったことは、やかんにとっても本望だったに違いありません。

     

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