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    チャンピオンケース

    こんにちは。ドクターカズです。

     

    「ねえ、聞いて…。○○さんのお母さん、人参で癌が治ったんだって。」

     

    朝食の席で、妻が真顔で話しかけてきました。あまりにも突然で、突拍子もない話の内容に戸惑っていると、「お医者さんは匙を投げたらしいけど、○○さんは諦めないで、毎日毎日人参をたくさん食べさせて、お母さんの癌を治したらしいわよ。」と畳みかけてきます。

     

    長年外科医として、癌の治療に携わってきた私には、にわかには信じられない話ですが、意気揚々と喋る妻の機嫌を損ねないよう、さり気なくもう少し聞いてみました。

     

    妻も詳細はよく知らないのですが、「人参で癌が治った」と言う友人の言葉を頭から信じているようでした。

     

    「本当に進行した癌が治ったとしたら、それはたぶん『チャンピオンケース』だよ。その友達が聞いたら、少々気分を害するかもしれないけど…」と、私は正直な感想を述べました。

     

    世の中には「癌から奇跡の生還」や「○○療法で癌が治った」というような情報があふれています。

     

    私は、すべての民間療法や代替医療を頭ごなしに否定するつもりはありません。進行癌を宣告された患者さんが、藁にもすがる思いで様々な治療を試す気持ちは、痛いほどわかっています。

     

    しかしながら、沢山の癌患者さんを診てきて、進行癌を治すことはそんなに甘くはないと、身をもって経験してきたのも事実です。

     

    あまたの患者さんの中で、極めて稀に治療がとても上手くいった人に遭遇することがあります。医者の世界では、素晴らしく結果が良かった人を「チャンピオンケース」と呼びます。

     

    但し、同じ治療法を他の患者さんに試しても、必ずしも功を奏るとは限らないので、チャンピオンケースは滅多にお目にかかれるものではありません。

     

    学会などで、ずば抜けて治療成果があがった患者さんの発表をしても、「それはチャンピオンケースでしょ」と突っ込まれることが多々あります。担当医の努力にかかわらず、「たまたま上手くいった」というニュアンスがその言葉には含まれているのです。

     

    病気に対して「効果がある」という言葉を軽々しく使うことはできません。

     

    例えば、人参が癌に効果があることを証明するためには、人参のどの成分がどういうメカニズムで癌細胞に効くのか、また、どのくらいの量をどれだけの期間食べればいいのかなどを調べなければなりません(年がら年中、人参をバケツ一杯食べることはできませんからね)。

     

    また、人参を食べすぎたことによる、有害事象も心配です。普通、ある薬剤が癌に効果があることを証明するためには、動物実験から始まって、数千人規模の大規模な臨床治験が必要ですから、少なくとも10年以上はかかると言われます。

     

    「難しいへ理屈ばかり言って…。母親を治してあげたいという、家族の強い気持ちが大事なのよ。貴方の知らない世界があることを、いいかげん認めたら?」と、妻には彼女なりの信念があります。この話題に対する私達夫婦の議論は、どこまで行っても平行線をたどるようです。

     

    ちなみに同じチャンピオンでも、ボクシングの村田諒太選手がチャンピオンに返り咲いたのは、たまたまではなく彼の努力と強い気持ちが全てだったことは、疑う余地もありません。決して、「チャンピオンケース」ではありませんから。

      

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    コメント: 1
    • #1

      ミセスピエール (火曜日, 06 8月 2019 15:33)

      考えさせられるブログで、興味深く読ませて頂きました。ブログから、思い出したことを二つ書いてみます。

      中島菜、能登演劇堂で有名な中島町で栽培されている野菜ですが、アンジオテンシンという酵素を有し、血圧を下げる働きが動物実験で立証されているそうです。ただし、条件があり、中島町で栽培される中島菜であること、限られた時期に収穫し、一定の温度のもとでペースト状にしたものであることなどです。厳しい条件のもと中島菜プリンとして製品化もされていましたが、甘みと中島菜独特の苦みが微妙で私の好みではありませんでした。

      もう一つ、料理研究家、辰巳芳子先生のニンジンスープをテーマにしたドキュメンタリー番組を見たことがあります。ル・クルーゼのなべで、それはそれは丁寧に作って、出来上がったスープをボランティアで患者さんたちに配っていらっしゃる……。確か「いのちのスープ」という映画にもなったと思いますが。心をこめて、理にかなったやり方でつくるスープに患者さんたちが涙を流して感動し、先生に感謝されるシーンが心に残りました。

      暑いと日々の食事づくりがついついおろそかになりがちな私ですが、食のもつパワーを改めて見直していきたいものです。ニンジンで癌が治ったというのも、ありえるような気がします。とりとめのないコメントで失礼しました。