こんにちは。ドクターカズです。
『がんゲノム医療保険適用へ』
先日、新聞の一面に載っていた見出しです。
妻にこの記事を読んだかどうか聞いてみたところ、「難しそうだからパスした」との答えでした。小難しそうなタイトルに、初めから敬遠した方も多かったのではないでしょうか。
癌は細胞内の遺伝子の異常が原因で発症する病気です。
癌化した細胞は、あたかもブレーキが壊れて暴走する車のように、無秩序に際限なく増殖していきます。癌細胞が正常な臓器を徐々に蝕んでいった結果、最終的にその生体は死に至るのです。
癌化の原因となる遺伝子の異常にはたくさんの種類があり、患者さんごとに違います。がんゲノム医療とは、患者さんそれぞれに起こっている遺伝子の異常を明らかにして、それに最も適した薬剤を選択して治療することです。
今までは、胃がんや大腸がんなど、癌を発生する臓器ごとに分類し、治療方法もそれぞれの臓器別に決定していました。
それに対して、がんゲノム治療は、癌が発生する臓器に関係なく、個人の遺伝子情報を基に癌の分類と治療方法が考案されます。つまり患者さんそれぞれの遺伝子の個性に応じて、オリジナルのがん治療が提案されるようになったのです。
感嘆のため息しか出ません。医学の進歩もついにここまできたか…と。
臓器別の画一的な癌治療が当たり前だった時代が、新たな扉を開けようとしています。
ところで遺伝子と癌治療といえば、まず思い浮かべるのが、米国の人気女優アンジェリーナ・ジョリーさんです。
彼女は自分の遺伝子に、乳癌や卵巣癌になり易い異常があるという理由で、健常な両側乳房と卵巣・卵管を予防的に切除しました。
当時は、何と思い切ったことをするのだ!と世界中が驚きましたが、「これで私の子どもたちは『ママは卵巣がんで死んだ』と言わなくて済むようになった。」という、彼女のコメントが大きな話題になりました。
現在日本では、がんゲノム医療は一部の限られた患者さんだけが対象です。高額な費用や個人情報の管理など、まだまだ問題が山積みですが、近い将来それがごく当たり前の治療になっていくのでしょう。
蛇足ですが、外科医の立場から言わせてもらうと、最近の乳房再建術の目覚ましい進歩が、アンジェリーナ・ジョリーさんの背中を押したことは、間違いないと思います。彼女曰く「小さな傷がある以外、見た目は手術前とほとんど変わりない」とのことですから。
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