こんにちは。ドクターカズです。
本日は大寒。
北海道では大荒れの天気が続いているようですが、ここ金沢では目立った積雪はありません。
せっかく買った除雪機(参照:タイトル「新型除雪機がやってきた!」)を、使いたくてうずうずしているんじゃないかって?
いいえ、昨シーズンのような都市機能を麻痺させる大雪はこりごりです。
そろそろ、膝や腰が痛むお年頃ですから、除雪作業はしないで済むなら、それに越したことはありません。
先日受診された40代の男性のお話です。
数日前から、動悸と息切れがひどくて来院されました。
早速聴診器を胸にあててみると、「…ん?何かおかしいぞ」。
よーく聴いてみましたが、普通と違って心音がよく聴き取れません。
いよいよドクターカズも耳が遠くなったのか?
いぶかしがる私の顔を見て、その方が仰いました。
「先生、私は心臓が右にあるんです。」
「それって、もしかして右胸心?」と私。
あらためて右胸に聴診器を当ててみると、まさしくその通り、よーく聴こえます。
「早く言ってくださいよ…。」
右胸心とは、本来胸の左側にある心臓が、右側にある状態のことで、約1万人に1人の割合で存在すると言われています。
これは、胎児が成長していく過程で、臓器が左右正反対に形成されるためにおこります。
分かりやすく言えば、普通の臓器を鏡に映して見ているような状態です。
心臓が右側にあるだけですから、心臓の働きに特に問題はありません。
右胸心は、昔から推理小説やサスペンスドラマの題材に使われてきました。
(左胸を刺したはずなのに死ななかった…等々)
その昔、大学病院の病棟で供覧されていた右胸心のレントゲン写真を、たまたま通りかかった教授が見つけ、「誰だ!レントゲンフィルムを裏返しに現像したのは!」と怒鳴りつけたという笑い話もあります。
よくよく聞けば、その患者さんは心臓だけでなく、胃腸や肝臓などの腹部臓器もすべて左右反対になっている「完全内蔵逆位」という極めてめずらしい身体でした。
私自身、教科書では見聞きしていましたが、目の前の患者さんとして相対するのは初めてでした。
治療が必要な不整脈があったため、その方には心臓専門医のいる総合病院をご紹介しましたが、今思い返しても、学術的好奇心を掻き立てられる珍しい症例です。
正反対になった内臓を思い浮かべ、胃カメラを入れたらどのように見えるだろうか…とか、胃の手術はどのようにやろうか…など、考え始めたら止まりません。
しまいには、ブラックジャックのように、左右逆になった内臓を鏡に映して手術する自分を想像をしてしまうのは、ちょっと行き過ぎですね。
メスは置いても、長年染み付いた外科医の性分だけは、なかなか衰えないドクターカズでした。
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